テレ朝記者「セクハラ告発」に舌打ちしたオンナ記者もきっといる
財務官僚のトップがセクハラ発言で辞任、なんていうニュースをフランス人の友人が見て、未開地の部族のニュースのようだとバカにしていた。確かに気軽にICレコーダーを使いそうな職業のオンナを目の前に「おっぱい」とか「エロい」とか「うんこ」とか言える感覚は前近代的だ。ユダヤ系米国人女優のナタリー・ポートマンがイスラエルの賞を辞退した、とかそんなソフィスティケイテッドなニュースに比べると、うん、確かに原始人みたいなニュースではある。
週刊新潮に最初に掲載された福田次官と女性記者とのやりとりを読んだときに、ふと思い出したのはとあるおじさんのことだった。以前とあるトーク番組で、突発的に私が番組のアシスタントMCをすることになった。なんでそんなもっときれいどころ(美人という意味ではなく清廉性のハナシ)がやるべき仕事がワイのところにきたんだ?と不思議に思っていたのだが、当該回のゲストがカリスマAV監督の村西とおるさんだというのを聞いてなんとなく納得した。村西監督はAV村で愛されるキュートなおじさんなのだけれど、いかんせんそんな村で培養された期間が長いため、会話の端々に「オマンコ」「足の付け根」なんていうちょっとエッチな言葉を挟まずにはいられない。レギュラーアシスタントであるフリーアナウンサーへの番組側の配慮(つまりゲストがアナウンサーに向かってオマンコきついですか? とか聞くのはどうなのか、という話)として、その回だけは元AV嬢の私を起用したらしい。私としては仕事が増えただけでなんら問題はない。オマンコがきついかどうかはさておき、私もかつてその村にいたのだから。監督自身は邪気も悪気も、実際のところはほとんどエロな視点もなく、ほとんど習慣、なんなら彼的にはむしろサービスに近い礼儀でそんなことを言っている。7000人以上のあそこをカメラ越しに見てきたわけだから、もはや1人2人増えようが増えまいがどうでもいいのだろう。
AV業界という動物園にいるぶんには無害で楽しい存在だが、高度に洗練された2010年代の実社会に放たれると、速攻で「#MeToo」委員会に捕獲されかねない危険人物となる。さて、福田次官のやりとりはAV監督ではなく東大法学部卒司法試験合格のエリートによってなされたためか、「あなたの足の付け根はきっと締めます締めます山手線…」という村西節に比べると面白さでは数段下だ。しかし、みだらな言葉の入れ込み具合では同レベルで張り合っている。「抱きしめていい?」「おっぱい触っていい?」と同意を得ようとしているぶん、言葉遊び、なんて言う割には遊びに乏しく少々弱気でもある。彼らのような男は大変生きづらい世の中になったと思っているに違いない。若い時分にはノーパンしゃぶしゃぶで密談する上司なんかを尻目に、おっぱいの一つももめなきゃ出世なんてできないぜ的価値観を押し付けられ、財務省という海を泳いできて、ここにきて「おっぱい触っていい?」と聞いたら社会での立場も大人としての威厳も全て失う。かといって別に同情する気にもならないのは、彼が日本のエリートの代名詞のような立場にありながら、そして財務省では鋭い勘を頼りに出世してきたにもかかわらず、時代の空気を読む勘がごっそり抜けていたところが、どうにも間抜けだからだ。どうしてもみだらな言葉を挟み込んで死んでいきたいなら、村西監督よろしく実社会とやや隔たりのある動物園で過ごしていればいいのにというのが率直な感想だ。
しかし、自分の所属するメディアや自分のジャーナリズム精神を使うのではなく、週刊誌に頼ってまでセクハラオヤジを駆除しようとした勇気ある女性記者、ノーパンしゃぶしゃぶの時代から抜けきれずになんとか勝ち抜けようとしたら最後の最後で捕獲されたバブルおやじ、そんなこの時代らしい登場人物に埋もれて声を失っている者がいることについてはあまり考慮されていない。私は一点、まさにそこだけにこの女性暗躍時代、じゃないや女性活躍社会の闇を感じないでもない。
オンナだって一枚岩ではないのだ。男並みに実力とロイヤルティーで働きたい女性、女なりに活躍したい女性、女ならではの活躍をしたい女性。そんな中、女の武器などなかったことにして、勉学や労働に勤しみ、あたかも乳も足の付け根もついていないかのように振る舞い、かといって女性らしい美しさを失わない、きれいで清廉潔白な女性はどんどん発言の場が広がり、汚いものが駆除されて働きやすい時代が間近に迫っているのかもしれない。
しかし、清廉潔白でもきれいでもない女たちは、つるし上げられるバブルおやじたちを横目に、ちょっと本音でも漏らせば、おじさんに向けられている矛先がすぐにでも自分の眉間を目指しそうな、嫌な緊張感のもとにいる。
許可を得ずに録音した本来の取材とは関係のないテープを週刊誌に横流す女性記者をみて、心強いと感じた女性がいるであろう反面、自分を担当している愛想の良い、手練手管の女性記者の取材を急に恐ろしく感じた男もいるであろう。
同時に、いい感じにあほなおやじを手のひらで転がしてうまいことやっていたのに、と舌打ちしているオンナだっている。おじさんに、警戒心と恐怖心を抱かれた時点で自分が女性ならではのやり方で積み上げてきた仕事のやり方が一気に崩壊するからだ。オンナを使って出世する、なんていう事態を世間は非常に冷ややかな目で見るが、生理の時には痛み止めを飲んでナプキン変えて、男より人生のうちに仕事に費やせる時間が少ない。
ましてや、もし子供を持とうと思えば長期のインターバルを余儀なくされる女が、会社の中でそれなりに自分の存在意義を認めたいとすれば、女の自分に使えて男のあいつらには使えないものを惜しみなく使い、男以上の価値を発揮するのだって、ある意味ではいじらしい努力である。
だって一部の(と言わないと怒られそうなので一部の)おじさんたちって結構おバカで、私たちが谷間の見えるワンピでも着て上目遣いで涙を浮かべると、さっき質問に来たうだつの上がらない男性記者には渡さなかった紙の一枚くらいはくれるものだから。もっと次元を落とせば、単に女性としてみられていないと機嫌が悪くなる女だっているし、官僚とのラブロマンスを望んで記者になる女だっているし、容姿に恵まれず殿方と縁がない人生を歩んできたものの、男ばかりの会社で記者になったらこんな私でも女の子扱いしてもらえる、なんて悦に入っている女もいる。胸を見せたくらいでネタが取れるならそんなにラクなことはない、と思っている元AV記者だっている。そういった女ならではの感情を持たずに生きるのが正しいなんて誰が決めたんだろう、とちょっと思う。何事にも清廉潔白を求める空回りの正義感によって生きづらくなっているのが、おっぱいもみながら日本経済を支えてきたバブルおやじだけだと思っているならば、それはおじさんの被害妄想だ。女性活躍をうたう政府のもとで、おっぱいとか縛るとか言っているトップ官僚がいることにみんなが辟易(へきえき)としているのは事実だが、こんな騒動を見ながら、活躍の場を失っている女性だっていることも、もうちょっと知ってほしいと思うのは、女性が差別されたり侮蔑されたりすることなく働ける社会を望んでいないから、というわけでは絶対にない。
鈴木涼美
社会学者。昭和58(1983)年、東京都生まれ。慶応義塾大卒、東大大学院社会情報学修士課程修了。大学院修了後は約5年半、日経新聞社に勤務。現在は雑誌・ウェブメディアなどでの執筆活動のほか、テレビタレントとしても活躍。著書は「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎) など。
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内田さんも良いが、鈴木涼美ちゃんも実に歯切れの良い文体で僕は好きだな。涼美ちゃんは内田さんの天敵、ジェンダー上野千鶴子の遺沢を継ぐ(まだ死んではいないけど、、)親父殺しの若手の急先鋒だ。敵ながらあっぱれということで、現在保守的な女子群から一番恐れられているニュータイプ女子なのだろう。
とにかく文体は行動的で実証的であるという点で、そこいらへんの口先だけのインテリ野郎が100名ぐらい束になっても勝てない迫力がある。内田さんの言うところの「とほほ主義」的な部分も無論持ち合わせているのだから恐るべし、だてにAV女優も東大生も日経記者もやっていない、こういう身体的な感覚を深く文体に刻み込んだスーパー女子が今後の日本をリードしていくんだろうと僕は思う。トランプやプーチンに張り合えそうな日本男子って僕には想像できないが、こういう女子ならなんとかするんじゃないのかという期待感が満載である。
テレビ朝日のセクハラ告発女性記者に舌打ちした女性記者だって多分きっと相当数はいるんだろうし、きっとオマンコきつい涼美ちゃんだってその一人なんだろうといっているのだが、しょせん女を売りにして出来るお仕事の質で取れる成果って結局は性的な範囲を超えないんだろうし、それに食いつくスケベな親父が前提として多数いるという状況に負っているだけのこと。それ自体が崩れれば自分のお仕事もそのうち崩れるのは火を見るより明らかなのだから、どうってことない下らん未開の部族のゴシップという批判を免れない。日本でだけネタになるニュースなのだろうなと思う。
トランプがポルノ女優の買春もみ消しに10万ドル払った払わんとかニュースになるが、金を払った事自体は別にいいんじゃないのと思うのだな。金は有るものから無いものに移動することで付加価値を増すのだから(つまり使用価値が実現するのだから)ある奴はどんどん払えば宜しい。ポルノ女優だってなんか欲しいから寝たんだろうし、エッチに倫理も糞もないんだろう。政治と女はどうでも良い事だな。ポルノ女優が政治決定プロセスに関与したのなら別だが、寝たのと政策は無関係だろう。その点は夫婦でも寝ていない安倍チャンのかみさんのほうが無邪気なだけに罪深いねえ。
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