孫が東京に帰ると僕の夏は終わる。という意味で先週は長女の孫たちが、昨日は長男の孫が熱海に来て、風呂に入って滝口葡萄園の葡萄を食べて伊東家の壷で鮨を食べて東京に帰った。3歳で伊東家の壷で納豆巻きを食べる幼児はすこぶる贅沢だ。人口比で上位1%以内なんだろう。僕が現役の頃は家にメルセデスやジャグアーが数台あると小学生の子供は大抵虐められる。異物扱いが当然という空気が日本にあるので、そういう家は安全上、私立に行くのだね。でも僕はあえて公立にいかせて虐められた娘を見たのが25年前。脅迫電話なんかが毎晩かかって来た。それを録音して被害届けを出したら、2日後にパトカーが小学校の校庭に止まった。制服を着た警察官が朝礼で脅迫電話の捜査を開始していると告げた。幼い声で謝罪の電話があって以降の脅迫電話はぴたっと止んだ。日本人の欲望や嫉妬はそんな程度である。今ならネットのSNSなんだろう。炎上結構である。どんどん燃やせ!便所の落書き。
爺さんと婆さんが田舎にいて、その子供が東京に行って就職結婚して子供が生まれお盆に帰郷するという昭和の風景にも大きな変化が出て来たのだろう。そもそも田舎の農家が減った。田んぼや畑をするにも年を取れば身体がキツくて言う事を聞かない。だんだんと農村が過疎になり、誰も後を継がないというのが当たり前になる。農地は耕作放棄地になる。子供はもう田舎に帰らない。不動産の多くは負動産になった。そもそも子供の多くは結婚もしないし、当然子供も生まないから孫がいない家がすごく多い。だから実家に帰る動機がもはや無い。そうやって家族が解体して日本はだんだんと痩せていき、やがて200年もすると消滅するのかもしれない。でもハイテク企業の高給リーマンもKEYさんみたいに飽きたら早期退職して田舎で百姓のままごとをする時代だ。
FIREが流行るのは、仕事がつまらないからである。短い人生なら誰もが自分のやりたい事がしたいのだ。金なんてあまり無くてもやりたいことをやるほうが幸福度が断然高いと僕は思う。そう書くと「それはあんたが金持ちだからだ。貧乏人の気持ちがわからないのだ。」と言われる。「いやいやそれは比較と程度の問題だ。金はキリが無いから、必要分があれば良いだけのこと。ないなら稼ぐだけのこと。君の電気代が12000円、僕のは45000円、約4倍だから僕は今なら毎月100万あれば足りるよ。それは毎日5万円相場で取るだけのことさ。』
老親と成人した子供というテーマは、欧米の小説でも書きにくいジャンルなのかもしれない。アップダイクやジョンアービング、ボラーニョやポールオースターなどの晩年の佳作には優れて良いものがあるが、日本人はあまり書かないようだ。身近な事は生きている人がいる間は書きにくいという事情があるのかもしれない。自分の両親が死んで、自分と死との間にある衝立てが無くなると、次の死は自分の番だという当然の順番が誰にも回ってくる。そこまであまり死について深くは考えないようにして生きて来た人も、否応無く考えるようになってくる。自分の周囲でも友人の数名が死に、自分の兄弟も死にとだんだんと死が現実的になってきて、さてやり残した事は無いか?と自問して「あれもやりたい、これもまだやっていない」という人はきっとまだ長生きするのだろうと思う。やりたいなあと思った事でそのほとんどを既にもうやってしまって「なあんだ、こんなもんか(すこし期待していたよりがっかり、、)。」と何をやっても感じる僕のようなタイプは張り合いがない。
そもそも「想いもしないような衝撃とか感激」なんて市場ではちっとも売ってないのである。そういうものは家族や血族の中でしか生まれない事だという気がつく頃には手遅れになっているぼんやりとした人が人口の8、9割ぐらいだろうと思う。先の事なんて何も心配しないで時代の空気に乗って一気に疾走するような人でないとそういう「想いもしないような衝撃とか感激」なんて多分一生涯感じることがないんだろうと思う。小説の必要性とはこういう代位行為の想像力なのかもしれない。そこにはある程度の品位と知性が必要だし、だから量的に多数派になることはあり得ない。大衆娯楽とは大衆が消費する悦楽ということだから、そこには価格がついてまわる。昨今の吉本報道などは典型だろうと思う。
友人の息子さんがMITを出てゴールドマンサックスに勤務している。28歳の理系で毎日12時間会社のコンピューターの前に座って、アルゴリズムの開発と検証をしている。年棒23万ドル。まあ現代の学歴エリートはそんなもんだろうと思う。彼は40歳までに金を作って早期引退をするのだそうだ。どこかの相場師と同じことを彼もやはり考えているんだろうと苦笑した。
それでもきっと彼の引退した15年後は自宅のコンピュータの前で何かしらしているんじゃないのか?と心配している。きっと変化するのは、通勤の有る無し、上司の有る無し、自由の有る無しぐらいだろうと僕は思う。 1枚拾って戻ったら1一と蓋をする あとはしばらく放置して動いた方について行く。 |
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