大学で近代経済学の基礎をすこし学んだ人なら、景気のサイクル論というのを覚えているだろう。コンドラチェフ、クズネツク、ジュグラー、キッチンの4サイクルで、それぞれ超長期の60年から20年、10年、4年の短期までそれぞれの波が合成されて景気変動が起きるという仮説である。無論仮説だから、サイクルの強度について様々なノイズが入るのは当然であるが、その強度と速度に関しては様々な係数を複合的に用いて計測している。銀行系の経済研究所などがこの調査をしていて、三菱などは有名だと思う。NYでガス爆発が起きて雑居ビルが崩壊したニュースをwebで見たが、このビルは100年以上たった老朽化したビルだったらしいから超長期の建設投資になんとか耐えて来たが最後に悪魔が待っていたということになったのだろう。だから人間の作ったものは何であれいずれ寿命がくるので、その寿命が来る前を見越して作り直すということが延々と繰り返されるという事だ。今まであった橋が地震で壊れて落ちれば掛け直しをしないと通行出来ないから不便だ。すると新たに需要が生まれる。まず古い橋を取り除くための撤去需要、次に新しい橋を掛けるための建設需要だ。設計から材料の調達、基礎の建設、架橋、道路の整備と多くの企業や人がかかわる大事業が生まれ、資金需要が発生する。債券発行で(国債とか地方債)資金を集め、セメントや鉄やアスファルトや塗料、建設や運搬の重機が大量に消費される。建設する人の弁当代や交通費までそれには含まれる。だから自民党は箱物を作るのが大好きで、景気が悪くなるとすぐに何か大きなものを作りたがる。今回はオリンピックを引っ張ってきたので、これに関連する施設や周辺整備を大々的に行うのは既定路線となったから2020年に向けて東京周辺で大きな建設需要が起きるのは確実となってそれを見越して昨年秋のゼネコン株の急騰が起きたのだろうと思われる。こんな大きな高価なものを誰の金で払うのかといえば税金が大半だから、赤字が増える。赤字は国債でとりあえず発行すれば良いし、現在のようなゼロ金利ならいくら発行しても金利などたかが知れている。1000兆円という天文学的な借金と言っても金利は1%なら10兆円だから、消費税を少し上げればなんとかなると自民党は踏んでいるのだろう。デフォルトするんじゃないかと心配性の人は危惧するが、もしそうなら金利が既に急騰しているはずであるが、国内金利は世界で最低を更新しているから杞憂というほかない。民間の貯蓄が膨大でそれが使い道が無く、銀行預金の大半は国債で運用されているのが実態だ。だから預金者が預金を引き出せば国債は売られ、金利は上がる宿命にある。ところが不思議なことに日本人はいくつになっても貯金するという癖をやめようとしない。わずかな年金で暮らす人でさえ、その中から少しでも将来のために(年金受給者の将来ってつまり死ということだろ?笑)貯金をしてお金を使わない。金さん銀さんのコマーシャルの通りのことが普通に行われてる。貯蓄がゼロの世帯は全世帯の1/3近いというデータがあるが、これは非老人世帯の低所得層が大半だろう。離婚した子持ちの女性などがこれに当たる。こうして溜められた金は老人の死亡によって相続され子供たちに引き継がれるが、高齢化が進んだために80−90歳の老人が死んだ時の遺産は50−60歳の子供たちのものとなって、結局若いお金の必要な世代には届かないケースが多いようだ。こうした好ましからざる現状は経済のせいというよりは社会の権力構造と既存秩序の因果関係で発生するからおいそれとは対策よって解決不能である。これらの相続世代は将来を考えて積極的な消費をあまりしないから、結局預金のまま市場に出てこないという繰り返しが起きている。だから金利が上がることがないし、そうした傾向は定着したようだ。
さて人間の寿命が80年として20歳までは働かないとすると実質的に働くのは多くて60年である。これはコンドラチャフサイクルと一致する。仮説では超長期サイクルはインフラの更新や技術革新のサイクルとあるが、それは人の入れ替わりによって起きると推定されまいか?すると現在の遺産受益者がすべて消滅する30年後ぐらいには少子化した世代がこれらの遺産の受益者として積極的な消費をし始める可能性が残される。それまでは多分経済や消費全体はお先真っ暗であるという事態が続きそうだ。新世代は2つの両親から2つの家を相続する一人っ子というケースが多いから、片方を売っても家はタダで手に入る。半分になった人口で遺産の売り食いをしても豊かな生活を受益することが可能だろう。それまではおそらく現在の消費傾向に大きな変化は起こらないと僕は見ている。翻って景気サイクルと株価のサイクルを比較してみると面白い。20年のクズネツク、10年のジュグラーを見ると、バブル時に派手に上がったのは都心部で大きな建設ビル投資やリゾート投資が行われた時期と一致する。それ以前は株価のピークは6507で見ると次の通りだ。1968 1974 1980 1986 1989 1996 2006 年にそれぞれサイクルのピークが来ている。間隔は 6 6 6 3 7 10年となっている。86年までは6年サイクル(設備投資の10年の約半分6で)89年は一気に3倍化したので期間短縮が起きた。大天井をつけたので後は下落のサイクルは上昇期間の2倍前後になる。3の倍で7 6の倍で10と定石どおりの動きである。今後2006プラス10で2016に次のピークがくるかなと思って僕は少し仕込み始めた所だ。160円が800円か1600円かはわからんが、多分大きく上がるだろうと思ってる。
金融商品の価格変動というのは基本的には金利と企業業績と資金余剰が決定因だと僕は思っている。日本は、というより先進国の富裕層では資金は有り余っている(偏在しているといったほうがよいか)。死ぬまでに自分の稼いだ金を使い切れないし使う具体的な対象がもう無い。全部いくつも持っているのだ。買い替えようにも更に魅力的な商品はほとんどないと言って良い。ベンツは2台あっても1台しか運転出来ない。さらにベントレーやロースルを買っても近所から白い目で見られる。(あいつだけ良い思いしやがってズルい!という嫉妬の塊だ、日本人は。していることの差を棚に上げて結果は平等でないと気に食わないという不平感情は農村文化そのものだ。)だから金持ちの金は安全かつ効率的な運用先を探して動き回るという性質は変わる事がない。すると数年のタームでは誰もが上がる物を買うという追随的な動きになるのは当然で、それ以前の段階ではもう下がらないものを買ってみるという初動の動きとならざるをえない。上がり切った債券を売る動きが今後顕著になれば、債券を売った損失を何でカバーするかは、債券の下落以上の上昇を期待できる商品=株式と不動産と商品(原油、金属、穀物など)以外にはない。だからそれがスパイラル状に交互に上昇するということになろう。市場規模と流動性からして株式が本命であるのは言うまでもない。つまり幻想に投資する(これを普通の人はバブルという)以外に高い収益性を担保できないという現実に直面して、やはり毎回それを繰り返すというのが悲しい人間の歴史である。早めに乗って少し早めに降りる人が上手ということだが、大半は下手で遅いから天井で買って毎回損になる。50年ぐらいの長いグラフを書いてみると上記のようなことが薄ぼんやりとわかってくるのだがする人はほとんどいない。
大震災が起きても、225が1000円下げても6507は150円をほとんど割らない。岩盤に達したものは下げようがないのだ。今日も163円1円安でいやいや連れ安だが動かないのと同じだ。何を言いたいのか?と言えば、仮に金が欲しいのなら当面は下げきった低位株を買うのが時間はかかるが楽に儲かるよということだ。林サンのFAI投資法にしても遠藤サンのやり方にしても同じことを言っている。前回は売り時期を失敗したから評判が地に落ちたようだがそれは個人の判断がダメだったということに過ぎない。上手く売り抜けた人もたくさんいたはずである。デフレ継続を読み切れなかったというのが後追いの理由だろう。賃金上昇が嫌々ながらも今年は起きたという事実を軽視してはならない。ドケチのトヨタでさえベアが上がったのだ。購買力の低下はこれで少し緩和されるだろう。でも不公平な世の中のお金の仕組みは今後も酷くなるばかりだろう。金持ちに更に有利な状態は少なくとも次の選挙までは続く。その間にどう自分が動いて市場から金を取ってくるのかが相場師の仕事である。それには動きすぎてはいけない。玉を溜めて動き出すのを待つ。材料でドテン空売りなど狂ってもしてはならない。最近相談にくる大損のひとは底値から3−4倍に上がっている株を目先天井を狙って団子で空売りを短期に仕掛けた人ばかりである。ちゃんとグラフを書いていればこんなところで売るはず無いところを売っている。そう思えないとすれば試し玉を使えないかおそらくちゃんと書いていないから感覚ができていないのだろう。団子の玉でも底値の現物買い玉ならそのうち上がる。だってインフレで通貨が膨張しているのだから時間が立てば当然だ。だから急いではいけないとクドイ話をするのだが、ド下手で欲張りの人ほど急ぎたがる。彼らにつける薬はない。破産しても多分直らない。博打好きというのはそういうものだからだ。それでも4回人生で破産して立ち直った林さんのような人もごく稀にはいる。それ(誤った行動)を直すのに彼がしたことは2分割の基礎練習だった。これが苦しくて続かないのである。失った金の大きさは自分の馬鹿さ加減と綺麗に比例する。それを認めることからしか立ち直れないのがこの仕事の苦しい所なのだろう。去年大損した人は売り玉を踏め。そこからしか再起は始まらないと思う。
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