衣食住、何を買うにもネット販売が若い世代を中心に一般家庭でも隆盛になってきた。とくに特殊品、専門品や高級品の店舗の制約のある地方在住者にとってみれば、ECコマースは立地ハンディがないから急速に主流になりつつあるのだろう。一定額を上回れば全国一律で送料無料というサービスやポイント制なども拡大して、買い上げ単価の上昇傾向や買い上げ箇所の固定化も見られる。あるいは買い物が困難な人、忙しい人、重いものを持ちたくない老人など宅配が中心のECコマースは消費のスタイルを激変させている。便利で安く広い品揃えというメリットだ。例えばzozotownが何かと話題になっているが、衣料品販売でもサイズ、カラー、ブランドなど新品から中古品まで物を買って売るという行為が消費者に当然の日常行為になってきて、従来の専業者が作って店舗で新品を売るという流通構造自体が劇的に変化しはじめている。ネットユーザーは現在は若い人ほど比率が高く、おそらく60代の中頃の世代までは日常的に使用していると思う。ゲーム世代はネット使用に抵抗感がないと思われる。彼らはメルカリやヤフオクを使って、商品を買うだけでなく不要になったものを売るということも日常化してきた。中古品は新品の数分の一の場合も多いので、全般的に商品単価は下がりぎみで、これが新品の売価の低下圧力にもなっている。セールもどんどんと日常化しているし、世界規模で小売りするサイトまで複数あるから競争が激しい。業者が皮革製品を輸入販売すると高額な関税がかかるが、個人が個人輸入する分は非課税だからその分安いのである。当然、業者は売りずらくなる。
単価で見ると一番高額な不動産から一番安いペットボトルの水まで、ECコマースではなんでも売っているようになったから、宅配が急速に比率が上昇して、百貨店が世界中で閉店、倒産の危機に瀕している。先週100年以上歴史があったサックスフィフスがついに破産法申請したし、日本でも伊勢丹三越や西武がどんどん地方店を潰している。日本で200億以下のデパートの年商は全部赤字だから、今後もどんどんと潰して結局残るのは都心の本店だけということにそのうちなるんだろうと思われる。そういう売り場で食っていたアパレルも売り上げが大幅に減り、どんどんリストラ中だ。バーバリーを失った三陽商会は売り上げ低下が止まらずにまた250人追加リストラになった。このままいくと潰れるかもしれないアパレルが急増している。ユニクロのようなSPCが主流になって、製造小売りというスタイルに勝てる方法論が恐らく見つからないのだ。
反面、人気のあるレアものは異常な高値に買い上げられる。CD売り上げは激減したが人気アーティストのライブチケットはプラチナチケットになって正価の数倍まで上昇する。値段は人気と需給で決まるという仕組みになってきたようだ。
これだけ商品生産が機械化され、人の労力がほとんど機械に置換され、原材料の調達から販売法まで国際化、最適化が進むと人が労働する要素がどんどんと減少し、なおかつ需要が弱いために価格は抑制されて、限りなくゼロに近づいているように見える。金利がゼロ、およびマイナスになって、世界は負債で覆われていき、資本主義生産にはもはや拡大の余地がないのではないか?金融市場はそれを暗示しているのではないか?と思うことがよくある。
先日のNHKのmoney番組で久しぶりに弱気の代表、水野和夫が出ていた。世界中で債務が膨大に増加して(総計147兆ドル)そのうち信用危機が勃発し経済は破局的な終末を迎える危惧があるといういつもの通りの見立てである。リーマンショックから早くも10年が過ぎで、各国の株式市場が史上最高値を更新するなかで、注意が必要だという警告である。
まあ歴史を見れば、相場というものは上がり下がりがあるものだから、どんどんと景気が良く高値を更新していても、ある時点で買い上げ過ぎて割高になればみんなが利食いをいれて暴落するという繰り返しをずっとしてきた。だから今回も同じことがそのうち起きるのは当然だが、それがいつになるのかは誰にもわからない。事実、今年は2月初旬に高値をつけてずっと前半は調整しており、7−9月で底打ちして3週間ほどで新高値に進むという動きの荒い相場だった。それがまた10月に売られて不安的化しているようにも見える。
ずっとジリジリ上昇するのなら、安値で買った玉をずっと忘れて長期間持ち続ければ儲かるが、上げたり下げたりを何度も反復して一定のあるレンジを往復するような場合には、上げれば売って、天井付近でどてん売り越して空売りで今度は押しや下げを取る。またコツンと来たら分割で買ってまた天付近で売るという細かな玉操作をしないと利食いにはなかなかならないだろうと思う。
天井するにもコツンと底打ちするにも、銘柄ごとに癖があり、毎回早い遅いが必ずあるので、細かい値動きを追うにはそれなりの専門的な道具が必要になる。(場帳とか折れ線グラフとか)そういうことが理解できれば、道具の重要性や道具の使用法と玉操作の基礎に真面目の取り組むようになると思う。そういうことをして生活するプロが昔から少数だが兜町や北浜にはいたのだね。今だってどこかにいると思うな。
価格変動がどんな状態になっても、必ず値というものは動くから、動きさえすれば、上げても下げてもその鞘を抜く仕事は成り立つ。潰れたリーマンブラザースという証券会社は1秒間に数千回の注文を出すプログラム取引で鞘取りをしていたという。それでも潰れる時は潰れるから相場は面白いんだろうと思う。金利がゼロ、あるいはマイナスになって、もうこれ以上生産も雇用も需要も拡大しない世界が一般化しても、不思議に価格変動は無くならない。これはつまり価格変動とは参加者の心理の振幅を表しているのだろうと僕は思う。明日の気持ちはお天気次第でどう変わるのか自分でさえわからないのだから、価格変動が無くなることは考えられない。つまり上手く対応すればそれで食える余地はあるということだと思う。
食料品とエネルギー価格の上昇が目立ってきたようだ。工業製品や賃金は上がらないが、不動産は徐々に上がり始めている。思っているよりもインフレが近いのかもしれない。